Google社が英国調査会社に委託した「日本におけるデータドリブン イノベーション」調査内容に関する共催シンポジウムに参加してきた

Google社が英国調査会社に委託した「日本におけるデータドリブン イノベーション」調査内容に関する共催シンポジウムに参加してきた

Clock Icon2014.11.18

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先日情報収集の折、以下エントリを目にする機会があり、弊社在籍地である秋葉原にてデータ分析及び利活用に関する非常に興味深そうなイベントが開催される事を知り、光の速さで申し込み処理後、先程参加して来ました。以下はイベント及びイベント告知に関するページと、そのイベントで展開されているPDF資料(日本語版・英語版アリ)となります。

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開催場所は秋葉原UDX。弊社からは秋葉原駅を挟んで非常に近い距離にあるため、この日は午前中に当イベントに参加、午後に出社して仕事(の前にエントリ書きですが)、というスケジュール進行となりました。以下参加メモです。

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目次

1.開会のご挨拶

  • 登壇・発表者:山口 琢也氏 (AICJ幹事長社/グーグル株式会社公共政策部長)

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シンポジウムの趣旨

  • インターネットの進歩や回線速度の増加により様々なデータが発生。クラウドでそれを無尽蔵に蓄積可能に。
  • そこからイノベーションは生まれるだろうが、実態・実感としてはまだまだ。
  • 経産省等が旗を振り、活動を活性化させる方向へ。具体的な事例や日本経済にとってどういう影響があるのかをデータの側面から見る。
  • イノベーションを更にすすめるには何をすべきかを議論。

2.「データ駆動型イノベーション創出戦略協議会 中間取りまとめについて」

  • 登壇・発表者:佐野 究一郎氏 (経済産業省 情報経済課長)

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  • データ利活用を促す環境整備が進展してきた。様々な情報がデジタルデータ化され、データの集積もクラウドで可能に。
  • IT社会で築く可能性:いわゆるビッグデータブーム。IT企業・供給者中心の視点?大量データ自体に着目、既存ビジネスや組織を前提とした受動的対応であった。
  • 今後はデータからの価値創出に取り組む。利用者からの視点。必ずしも大規模である必要はない。環境変化を踏まえた主体的対応が求められる。
  • ネットに限らずリアルの世界からも膨大なデータが発生するように(IoTの実現)。
  • 3つのイノベーションが起こる
    • 1.プロセスイノベーション(事業運営の効率化)
      • 山崎製パンの事例:大量の受注データをリアルタイムで一元管理:製品廃棄ロスを4割削減
      • みらい (植物工場):栄養価の高い野菜を効率良く生産、提供する仕組みを開発
      • オムロン:ビッグデータを活用して工場の生産効率を高めるシステムを導入。
    • 2.プロダクトイノベーション(潜在需要の喚起)
      • あいおいニッセイ同和損保:車載器からの走行データを受信、顧客の走行距離に応じた保険料を算出
      • JRウォータービジネス:データ利活用から、オリジナルのボトル容器を開発。駅構内自販機とSuicaから得られるデータを分析、製品開発に繋げた。
      • カゴメ:Amazonと協力、購買履歴や検索キーワードを分析し、Amazon専売製品を開発。
    • 3.ソーシャルイノベーション(3.ソーシャルイノベーション)
      • ソニー:電子お薬手帳サービスを川崎市、横浜市で開催。薬の重複や飲み合わせのチェック等を行えるように。
      • 埼玉県&本田技研:道路交通に関するデータを相互交換、有効活用する協定を締結。危険箇所を特定し、事故削減につなげる。
      • NEXCO東日本:東大、北海道大学と共同で橋梁点検で利用するデータの活用
  • 我が国の状況
    • IT投資がどう捉えられているか?→日本に於いてはITをもたらした効果:社内業務の強化、効率化(内向きに)。米国に於いてはそうではない。外に向いている。
    • ビッグデータの利活用について→日本:聞いたことがない4割、検討3割、7割が利活用していない。米国は9割が利用している。
    • IT投資の認識→日本:極めて重要=15%。米国は7割。
  • 今後の取組方向性:これまでは企業内に閉じたデータの利活用。今後は企業が壁を超えてデータを共有、活用・取引できる形に。
    • 1)新技術を活用したIT分野での新ビジネスの創出
    • 2)既存産業のIT活用による競争力強化、新領域への進出
    • 3)異分野への産業や社会システムの融合に拠る新産業創出
  • 望まれる『担い手』:
    • 1.データを起点にビジネスの橋渡しをするプレイヤー
    • 2.企業保有データを見える化する
    • 3.特定分野のデータを異分野に展開する
    • 4.データを利活用して新たなビジネスを創出する
  • 課題:
    • 1).データを利活用する組織の課題:どこにどのようなデータがあるかわからない/便益、リスク、管理方法がわからないなど
    • 2).異なる組織をつなぐプラットフォーマーに関する課題:取引の相手として認めてもらえない/資金調達、設備投資が困難など
    • 3).データを保有する組織の課題:データを提供する定義を理解していない/組織内でも保有データを利活用出来ていないなど
  • まとめ:対応の方向性
    • 1.1.事業者間の連携促進/必要な環境・条件課題を調査し対応策を検討:データジャケットというアプローチ。データそのものを提供するというよりも【こういうデータを持っている】を示す、それを元にアイデアを議論。実際にどういった課題があるかをそこから探る
    • 2.事業者と消費者との関係:分かり易いパーソナルデータの取扱を説明、消費者の十分な理解と安心を得る事が出来るかが重要。
    • 3.関連する法制度などの整備:パーソナルデータは利用価値が高い一方、プライバシーの観点から不安を抱く消費者も存在。『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』を決定。(H26.6.24)
    • 4.担い手の発掘、育成:データ取引を仲介するなどの役割を期待される担い手の発掘、育成事業に取り組む。
    • 5.本協議会の在り方:情報共有、データマッチングの促進する場として継続、在り方については他民間団体との連携も含めて議論。

3.“Data-Driven Innovation in Japan: supporting economic transformation”

  • 登壇・発表者:Nico Flores氏 (アナリシス・メイソン) / ※同時通訳つき

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  • 昨今様々なデータが生まれ、データをどう使えば良いかの指針的なものが明確となっていなかった。この部分は体系立った形で理解する事が重要。
  • 技術が進展しているのでデータが捉えられるようになっている。例えばセンサーデータ。また、ストレージの価格も安くなり、アルゴリズムも発展してデータの分析も可能に。
  • 機械学習、オンライン学習も注目。これらのデータを体系だった形で利用出来るかどうかを考えていく。
  • データイノベーションが何なのかを定義し、どのような経済価値が生まれているのかを見る。政策がどのような影響をうけるのか。
  • 日本では100程度の企業に対し、調査を行った。
  • 現在、2014において、データドリブンイノベーション(以下:DDI)は少なくとも7.3兆円の価値・経済効果を創出している。2020年までにはこの数値が倍になると予想。
  • 消費者に対する便益として、また様々な企業にもこの効果はもたらされる。
  • DDIの定義について:我々の定義を明確に。
  • DDIに含めない部分、データを活用してどのようにしてイノベーションを起こすのか。その内容については入っていない。
  • データを革新的な方法で価値を生むために活用する、技術寄りの話ではなく、経済的な価値を生むというような定義で語っている。
  • 大きな枠組としては、例えば中小規模の会社が価値を、データを元にサービスを展開し、自分たちの経済的な立ち位置を展開する。
  • DDIは、ビッグデータとは異なる。サービスに於いて活用するデータは大小ある。分析が必要な場合もそうでない場合も。
  • 最初に行ったのは概念的に様々な価値を生み出す方法を整理整頓することから。
  • 新しいサービス、というのがキーワードになる。どのように分類するか。かなりここには時間を掛けた。
  • バランスが重要。体系的でありたいと思う反面、直感的に観てわかる事も重要。
  • 120くらいの異なる革新的な事案を検討し、5種類のタイプに分類。

1.新しいバザール(特定個人向けのサービスをその人向けの料金で)

  • 100〜150年前、何かをお店で買うと、その人によって価格が決められる部分があった。
  • その人のユニークな価格がその場で決まる。それが均質化されて値札が出来た。
  • 製品やサービスを買う時に、その時その場のその人の価格で購入が出来る。
  • 保険価格、保険料。企業側が個々の個人の行動を分析し、リスクをベースにした保険料を定義する事が可能に。

2.今そこでのサービス(時刻と位置データのリアルタイムでの認識)

  • GPS、位置情報をベースにしたもの。リアルタイム、機械や人に対して、今の状況を見る。今この時間にサービスを提供
  • 工場でのRFIDタグ、在庫管理、出庫管理。トラックやコンテナ等の状況を理解する。

3.気配りサービス(行動の特定や予測のためにパターンとリアルタイムデータを利用)

  • 予測技術を使う。ユーザーのニーズを予測する。ユーザーが自発的に情報を出すのでは無く、背後で情報を収集しておき、利活用する
  • コマツ:機器情報の追跡、このタイミングで保守が必要になる、等。

4.共通属性をもつ人々向けサービス(事業効率を改善するための特徴と相関関係)

  • 販売促進プロモーション:オンライン広告、年齢や性別に向けた広告。
  • どんな映画をnetflixでみたらいいかを予測し提案。

5.賢明な立案作業(複雑なシステムを改善するための大規模なパターン分析)

  • 何百万というデータポイントを元にパターン抽出を行う、google検索の言葉で同じ様な結果を出す
  • その年の渋滞パターンを見て行動計画を起こす

...と、この後の内容については同時通訳のメモを取り切る事が出来ず(抽象的な言葉も多く、意味を解釈仕切れませんでした...m(_ _;)m)。基本的には以下PDF資料の内容を要約したものとなっていましたので、以降詳細についてはPDF資料を御覧ください。4章〜5章以降の内容が続く形となります。

4.パネルディスカッション「ビジネスにおけるデータ活用事例の紹介」

  • モデレータ:
    • 渡辺 智暁氏 (国際大学GLOCOM 主幹研究員/准教授/研究部長)
  • パネラー:
    • 田中 辰雄氏 (慶應義塾大学経済学部 准教授)
    • 中村 均氏 (株式会社資生堂 コミュニケーション統括部 メディア戦略室 デジタルメディア グループ参与)
    • 別所 直哉氏 (ヤフー株式会社 執行役員 社長室長)
    • 森永 和也氏 (イオンリテール株式会社 執行役員 オムニチャネル推進本部長)
    • 山下 崇氏 (アディダスジャパン株式会社 アディダスマーケティング事業本部 Football / mi Coach / mi Adidas team / Rugby / ビジネスユニットカテゴリーマーケティング / シニアマネージャー)

まずは4社それぞれの取組についての説明がなされました。

a.micoarch(マイコーチ)について

山下 崇氏(アディダスジャパン株式会社)

    • ウェアラブルデバイスを担当。

全てはアスリートのために。これは創立者の理念でもある。

  • トッププロから一般のユーザーまでスポーツで成し遂げたい目標をサポートする事を使命と考えている。
  • スポーツにおけるデータ:色々なウェアラブルデバイスが出ている。
    • ランニングウォッチ(スポーツ・競技/健康)
    • スマートウォッチや活動量計[=進化した万歩計](日常)
    • 医療機器(病気)
  • micoachはあくまでもスポーツや競技、アスリートを支援する為のものとして位置付けている。
  • adidas miCoach アディダス マイコーチ | adidas ONLINE SHOP
    • ddi-101adidas
  • ウエアラブルデバイスでアスリートをサポート。心拍トレーニングデバイス/パフォーマンス計測デバイス双方をwebやアプリで繋ぐ。
  • W杯:ドイツ優勝、目立った活躍国の特徴は【フィジカルが強いチームが勝った】点。
  • ロッペンのサッカー界史上最速の速度で振り切ったシーンが特徴的だった。
  • スポーツの大事な点、戦術・技術/精神力/フィジカル。得てして戦術や技術、精神力が強調されがちだが、マイコーチが目指すのは『フィジカルデータの可視化』の部分。
  • micoach elite:ACミラン、バイエルン・ミュンヘン、ラグビーのオールブラックス、ドイツやアルゼンチン、マリノス等が導入。価格は数千万円(!)
  • スパイクに入れるセル型のものも販売。
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    • 香川選手が計測。前後半で運動量が変わらない。これは凄いコトである。
    • 一方、メッシも計測。メッシ、本当に走らないw ただこれは深く見ていくと後半の方が高強度が多く、敢えての部分もある模様。『走れない』のではなく『走らない』。

b.データを活用したお客様へのおすすめ

森永 和也氏 (イオンリテール株式会社)

  • データを活用したお客様体験イメージ/イオンのオムニチャネル
  • リアル店舗とネットの視点からお客様のニーズを正しく提案し、必要もしくはより生活を楽しく豊かにするモノ・コトを提供。
  • データ活用例:紙ベースでの商品ご提案
  • データを活用したお客様の継続利用促進
  • お客様のデジタル体験フロー

c.資生堂の取り組み(ミライ肌予想)

中村 均氏 (株式会社資生堂)

  • 実現までのステップ
    • データマイニングという概念の理解、社内への有用性の説明
    • 実験の実施
    • 採用サイト探し、本部開発への予算獲得
    • 実際の開発上の問題
  • ↓:お客様一人ひとりに向けたパーソナルな美容情報配信の実現への取り組み
  • ↓:方法の模索→KXEN、データマイニング専門かとの出会い
  • ↓:手弁当での実験展開と方向性探求
  • ↓:社内協力者、スポンサー探し
  • ↓:開発上の様々な問題の解決へ

d.Yahoo! JAPAN データ活用の取り組み

別所 直哉氏 (ヤフー株式会社)

  • ビッグデータによるパラダイムシフト
    • これまで:既知の時代から(特定の目的の為にデータを集めて処理)
    • これから:探検の時代へ(集積された膨大なデータから思いもよらなかった利用目的を発見)
  • インフルエンザ流行予測
  • 検索サービスのクエリ(検索語)データを利用し、景気の『今』を知る試み
  • 電波環境改善への貢献(防災速報)

e.パネルディスカッション

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最後に短い時間ではありますが、上記発表の4人を含めてのディスカッションが行われました。その中で気になった部分をベースにメモ。

  • 取り組みについては『情熱が大事』。アナリストに丸投げしてしまう危険性も。丸投げはイカン。自分なりに何かをやる。多分こういうことなんだろうなと理解をした上で専門家と話す。データを実際に使っていける人が増えていかないと。
  • 利便性を如何に伝えていくか。会社内でさえも抵抗がある、個人情報保護法の制約。これを越えていくには利便性がキーとなるのだが全体としてどういう利便性があるかを考えていくのが難しい。危険性の方はイメージし易いけれども...
  • まだまだ日本では安心してイノベーションを生み出していくには程遠い?見る目も養って行く必要がある。
  • チャレンジするからイノベーションが生まれるのであって環境が生まれるのをまっているのではダメ。データがあるから何しよう、では無く、何をしたいか?その為にデータを利用するという考え方が大事。
  • 大学ではデータを分析する生徒が増えている。データ分析をするという世の中の需要を敏感に察している。
  • データドリブンに関しては『やったもの勝ち』。世の中の合意を得てからやるのではなく、やったもの勝ち。
  • 利便性とリスクの天秤について。図書館とAmazonの例が好例。(図書館の貸出情報は厳密に管理されるものであるが、一方でAmazonはユーザーのデータを管理している。でも文句は出ない。何故か?利便性がリスクを超えているから。利便性が高いと気にならなくなる。利便性が先に見えると気にならなくなる。資生堂の件もまさにコレ。『なんでデータを提供しなきゃなんないのよ』→『貴方のお肌を見続けますよ』→『なるほど、であれば...』
  • 使う人の利便性、ハッピー、達成感。その人に取ってシンプルな理由に目を向けていくか、究極の幸せの為に進んでいければ。
  • 如何に負担を減らし、有意義な事に時間を回せるか。その道筋を示していければ。

まとめ

以上、イベントレポートでした。我々が現在携わっているような『ビッグデータ』については関連があるものの直接そのものには...という内容でしたが、同じくデータを扱う者の視点として非常にタメになる部分も多かった内容でした。直接関連している(冒頭で紹介した)PDFについても、現状ざっくりとして読んでいませんが通して読んでおく事で色々参考になる部分も多そうです。こちらからは以上です。(以下写真の小冊子はイベントで配布されていたものです。こちらも読み応えある内容となっています。)

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